診療科の特色
画像診断技術の急速の進歩に伴い、撮影装置や読影環境は大きな変化が続いています。X線を用いるCT検査では、頭部であれば1分もかからない速度で撮影できる装置が登場しました。また、画像検査で避けて通ることのできない造影剤の使用量も、4分の1程度まで減らすことのできる装置が登場し、京都市内でも活躍しています。さらには、より少ないX線で良質な画像を計算することのできる人工知能を搭載した装置も登場しました。当院では、2020年のコロナ対策助成金をフルに活用し、2台の診断用CT装置を更新しました。撮影時間の短縮や造影剤の減量は不可能ですが、X線被曝を減らした検査を受けていただくことができるようになりました。
MRの技術の進歩もCTと同様、目を見張るものがあります。当院の装置は3世代以上前の装置であるため、対応不可能ですが、撮影時の息止めが不要になった装置が市内のあちこちで活躍しています。また、造影剤が病変部分を流れる様子を秒単位で観察できる(当院では10秒程度)装置も普及し始めており、新たな知見が報告され始めています。当院でも近い将来、これらの新知見を元にした診断ができるようになることを願っています。
核医学分野では、RIの内用療法の選択肢が増えました。従来はβ線による甲状腺の治療のみでしたが、β線による低悪性度リンパ腫治療やα線による去勢抵抗性前立腺癌の骨転移治療が実施できるようになりました。当院でも対応しています。近い将来、新たなβ線治療薬が認可される可能性が高くなってきています。地域がん診療連携拠点病院として、「さらに高次の医療に対応できるよう努力します」という病院基本理念に則り、迅速な対応がなされるかは不透明です。患者さんの治療ニーズに答えられる環境が速やかに整うことを願っています。
放射線診断科は診断業務だけではありません。各科の治療のお手伝いもしています。IVRと呼ばれる特殊な治療です。IVRとは interventional radiologyの略で、画像診断装置を駆使して、標的病変に針を刺し、組織を採取したり、体の奥から膿を吸い出すチューブを入れたりします。また、血管内にカテーテルと呼ばれる細い管を挿入し、出血を起こしている血管に塞栓剤を充填して出血を止めたり、ステントと呼ばれる金属製の梁を挿入して、閉塞した血管を広げたりもしています。
一般的な診療科の特徴紹介の最後に、近年話題の人工知能の活用にも触れておきます。人工知能開発者の一部から「人工知能の普及で放射線診断医は不要になる」との発言で、一時は志願者が減少する事態になりました。ところが、人工知能を利用した読影実験では、放射線診断専門医が人工知能を利用すると診断精度が等しく向上したのに対し、診断業務を専門としない医師が人工知能を利用すると診断精度が下がることがあるとの結果が出てしまいました。人工知能を生かすには画像診断の素養のある医師が必要という結果で、ますます放射線診断医のニーズが高まっていることの証左です。概算すると、当院では、およそ7名程度のフルタイムの診断専門医が必要という計算になります。
以上のような環境下にはありますが、我々は、放射線診断業務を “Diagnostic radiology is science of imaging and art of imagination”であると捉えて業務に臨んでいます。William Osler先生が内科診断学を表現した有名な言葉に擬えたものです。意訳すると「画像診断の極意は科学的根拠に基づく病変の適切な画像化と匠の想像力を生かした病態の解明にあり」といったところでしょうか。CT、MR、SPECTといった撮影装置の性能を生かし、限られた時間で最大限の情報を画像化するには、装置に関する知識、病気に関する知識を総動員して臨む必要があります。こうして得られた画像には、検査対象以外の病気が映り込んでいる場合も少なくありません。検査を受けた患者さんがどんな状態の方かを想像しながら診断業務を進めることで、1人でも多くの患者さんをより良い治療に結びつけたいと考えています。
IVRに関しては、頭部は脳神経外科、心臓・大血管は心臓血管センター、肝臓・消化管は消化器科が担当しています。その他の領域については、当科で対応しており、年々、増加しています。