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患者さん用クリニカルパス
スペーサー
地域がん診療連携拠点病院
   季刊かつら
 
■平成20年度を迎えて
  院長 野口雅滋

■患者さんにやさしい手術 心拍動下バイパス術
  心臓血管センター・外科 部 長  森田雅文

乳がんの診断と治療
  馬場慎司・上原正弘・宮部試q・日置三紀・安田和子・中司明美・人見章子・芳賀明子
 
平成20年度を迎えて
 今年の冬は、ここ数年にないほどよく雪が降りましたが、ここ数日一気に春めいてきました。平成20年度の初頭にあたり、この一年間の行動方針を述べたいと思います。

 昨年度の行動方針は「満足度の向上」でした。病院で働く職員の満足度の向上が、患者さんの満足度の向上につながり、引いては地域の満足度の向上につながるということで、一年間頑張って参りました。特に「医療の質」を上げることが、患者さんや地域の満足度の向上につながるとして、総合的質管理活動(TQM)に取り組んできました。患者さんやその病気はそれぞれ違っても、均質な医療を提供できるようにとクリニカルパスを導入してきました。安心・安全な医療を提供するための活動、患者さんの栄養状態を改善し床擦れを予防する活動、感染予防や抗生物質・血液製剤の適正使用を進める活動も推進してきました。このような活動を通じて、京都桂病院で提供している医療の質が向上し、少しは患者さんや地域の満足度が向上したのではないかと期待しています。
 今年度の行動方針は「病院の社会貢献」としました。当院は今から70年前に「患者さんや地域のため」との理念のもと設立されました。京都桂病院が地域のために存在していることは間違いありません。しかし、現在、病院には四疾病・五事業で地域に貢献することが求められています。四疾病とは「がん・糖尿病・急性心筋梗塞・脳卒中」で五事業とは「救急・災害・へき地・周産期・小児」です。がんに関しては、当院は「地域がん診療連携拠点病院」にも指定され、地域に貢献していることが認知されています。糖尿病に関しても、地域でただ1人の糖尿病専門医を中心に地域に貢献しています。急性心筋梗塞に関しても設立10周年を迎えた、心臓・血管センターを中心に地域に貢献しています。コジェネ発電等、災害時の医療提供への対応も取っています。小児科医不足、産婦人科医不足が叫ばれる中、当院は小児科医、産婦人科医ともに5名が勤務し、地域に充分貢献しているものと考えています。しかし救急に関しては、「断らない救急」を掲げて対応してきましたが、不十分な面もあったかと思います。4月1日より、救急を専門に診察する先生を2名迎え、救急部を立ち上げます。今しばらく時間はかかるかもしれませんが、救急への対応でも充分地域に貢献出来るよう努力していきます。
 この地域にお住まいの方々に対しての疾病予防も社会貢献の大切な柱の一つと考えています。疾病の原因として認識されているタバコの害を病院から排除するため、4月1日より病院の敷地内全体を禁煙とします。繁華街の通りやタクシー内では禁煙が普通になってきましたが、医療を提供する病院の敷地内に喫煙場所が設けられていました。病院敷地内の喫煙場所も撤去します。どうしても禁煙できない方への対応も考えていきます。
 地域から必要とされる病院で有り続けるために、社会貢献を続けて行きたいと思います。今年度も一年よろしくお願い申し上げます。

 
専門医がお答えします
  どんな患者さんのための手術ですか?

イメージ図
A 心臓の筋肉を養う冠動脈に動脈硬化があるために血流障害がおきて、胸がいたくなったり(狭心症)、心臓の筋肉が死んでしまったり(心筋梗塞)した方のための手術です。動脈硬化で狭くなった冠動脈をカテーテルで広げるバルーン療法(カテーテルインターベンション治療)が心臓内科でまず行われますが、効果が少ない場合や危険な場合があり、その際は内科医からバイパス手術が勧められることがあります。実際には、
1)左冠動脈主幹部病変(冠動脈の根元の太い部分)で石灰化が強い場合。
2)3枝病変(3本の冠動脈に狭窄がある。)
3)心筋梗塞を合併し、心機能が低下している場合。
4)風船(バルーン療法)が通らない冠動脈狭窄。
5)バルーン療法を行っても再狭窄を繰り返す場合。
6)バルーン療法の際に違う冠動脈を傷つけてしまいそうな場合。
などです。

どんな手術?(手術の内容は?)

A 冠動脈の狭窄している部分を治すのではなく(バルーン療法は狭窄部を治します。)、狭窄の先(末梢)に自分の血管(グラフト)をつないで、心臓の筋肉へ行く血液を増やす手術です。バイパスに使用されるグラフトには内胸動脈(胸壁の裏側にある血管)、橈骨動脈(腕の血管)、胃大網動脈(胃の血管)、大伏在静脈(足の血管)、外側大腿廻旋動脈(太ももの血管)などがあります。
 手術には大きく分けて、人工心肺を使用して一時的に心臓を停止して行う手術(人工心肺下バイパス術)と人工心肺を使用せずに心臓を動かしたまま行う手術(心拍動下バイパス術)があります。人工心肺による合併症を無くすため当院では、すべての患者さんに心拍動下バイパス術を施行しています。

手術の成功率は?

A 日本全体の成功率は約98%です。当院に私が赴任してまだ、半年ですが、成功率は100%です。すべての患者さんに体の負担が少なくてすむ、心拍動下バイパス術を行い、ご高齢な方や、数々の合併症をお持ちの方(寝たきりで自分では動けない方は除く)にも行っています。


手術の合併症は?

A 特に問題なのは脳合併症です。心臓の手術で脳は関係が無いように思えますが、心臓から送られる血液で脳細胞がエネルギーを得て生きていられるわけで、手術の際に心臓を触ることで一時的に脳への酸素、エネルギー供給が不足することが考えられます。発生率は1〜2%ですが麻痺などの後遺症が発生することがあります。
 その他に、術後不整脈、肝臓の機能低下、傷の感染などで入院が長引くこともあります。

入院期間は? 費用は?

A 当院では手術の際に自分自身の血液を貯めておくこと(自己血輸血)で輸血を行わずにバイパス術を行っています。そのために、手術の7日前から準備を行って、手術翌日か翌々日には歩行を開始してリハビリを行い、術後約2週間でバイパスが流れているかを確認するカテーテル検査を行い退院して頂いています。心拍動下バイパス術は手術費用も安く、入院期間も短くなる手術です。

 以上、心拍動下バイパス術は心臓外科医にとってはストレスの多い手術(心臓が動いたままで1.5oの血管を縫い合わせなければならないのだから)ですが、患者さんにとっては合併症の危険性が少なく、回復が早く、入院期間が短い、費用も少なくすむ〜やさしい手術〜といえます。

 
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馬場医師
より
 乳がんは乳腺にできる悪性腫瘍で、日本では乳がんにかかる女性は年々増加しており、今では年間4万人の女性がかかると推定されていて、2006年には1万人以上の方が亡くなっている病気です。これはここ50年でみると7倍近くに増えています。この乳がんの治療について当院でのチーム医療を中心に紹介します。

上原医師より


 乳がんは罹患率・死亡率ともに増加している、女性にとっては最も身近ながんです。乳がんは検診での発見率は0・5%程度しかありませんが、乳がん検診の受診率の低さも問題になってます。ご自分で触診をされて不安になって乳腺外来を受診される方も増えており、外来では生検やマンモグラフィー・乳腺エコーなどを使い早期発見につとめています。早期発見できれば乳房の温存療法も十分可能になり、治療の幅も広がります。当院では術前術後の全身療法や放射線療法、また術後の早期リハビリや臨床心理士のサポートも含めチームで支援しています。


宮譜緕tより

 リハビリ科としては術前から手術に対する不安をやわらげ術後の早期リハビリをスムーズに行うための支援と、術後中長期の合併症の予防のため作業療法士による介入を積極的に行っています。
 当院では比較的若い乳がん患者さんが多いため日常生活の支援につながる作業療法士による助言を行い喜ばれています。
 術後は1日目から肩関節の屈曲から始め退院時の評価で1/3程度の方はリハビリ科外来で継続的な支援を行っています。

日置薬剤師より

 乳がんの治療において薬剤師の役割はホルモン療法と化学療法の2点があります。当院では外来での化学療法へ積極的にかかわりこの4月からは薬剤師が外来化学療法室に常駐し患者さんお一人お一人によって異なる副作用への対応に当たっています。また病棟での服薬指導において、患者さんの副作用への不安や心配を取り除けるよう努めています。

安田看護師より

 外来の看護師として外来通院される患者さんに「いつもみる顔」として安心を提供するとともに、告知の段階から患者さんと医師との橋渡しの役割を担えるよう努めています。初めてなった病気で患者さんは不安と心配でいっぱいです。私たちは家庭内での女性としての不安も含め、できるだけ話や悩みをお聞きし、寄り添っていきたいと考えています。

中司看護師より

 病棟では乳がんチームの機能をうまく生かして患者さんに情報提供でき、支援できるよう心がけています。私たちが入院されている1週間から10日の間に多職種の役割、支援の内容をうまく伝え退院後の支援に役立てるよう看護しています。

人見臨床心理士より

 私たちの仕事は外来で患者さんと一緒に医師から告知を聞くところから始まります。その後患者さんとご家族から別室でお話を聞き心配や不安を取り除いていくお手伝いをします。また入院中も入院された日、手術日、退院日などに伺い各専門職の間に埋もれた不安や不満をもらさないように残さないように努めています。

芳賀看護師より

 外来の化学療法では術前の化学療法が増加しています。これは日常生活を過しながらの治療になるので、ちょっとした不安も見逃さないよう努めています。
 またこれからの手術や入院治療への不安もかかえておられるので、これらの不安を解消してあげるのも外来での役割だと感じています。

まとめ
(上原医師)

 当院の乳がん治療の特徴はこれまで述べてきた多職種によるチーム医療により患者さんの悩みや不安・心配事をそれぞれの専門職の力を発揮し、治療に前向きに取り組んでもらえるよう支援するとともに一日でも早くハッピーになってもらうことです。私たちは国内での標準治療を行うとともに、世界的な治療レベルの情報を集めたり全国規模の臨床試験にも積極的に参加し、新しい治療法にもトライしていきたいと考えています。最後に、乳がんは触診という自分で見つけることが可能ながんです、おかしいなと思われたら迷わず乳腺外来を受診してください。早期発見・早期治療が治療への近道です。
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