バイタルサインからまず鑑別&蘇生
【投稿日】2017年5月18日(木)
京都市上下水道局は毎年GW前後に
イベントとして一部無料公開する期間があります。
上の写真は鳥羽水環境保全センターの藤棚です。
藤の香りを感じながら様々なゆるりイベントをやっています。
アクセスが少し悪いので、GW中でも街中ほどの混雑はありません。
京都在住の方混雑する観光地に行きたくない人は
一度行ってみてはいかがでしょうか。
5月10日の早朝学習会は
80歳台女性「嘔吐、ショック」で救急搬送。
救急隊到着時のバイタルサインでショックバイタル。
最初の段階で1年目研修医の皆さんに鑑別疾患を挙げてもらうと、
ショックであるにも関わらず、
嘔吐を中心として疾患を挙げてしまいました。
はい、ダメぇ。
しつこいですが「ショック」です。
Primary Surveyの蘇生開始の条件に引っ掛かります。
ショックの患者は、
系統立てたPriimary Surveyに乗っ取って
評価と蘇生を行いつつ、
どのショックか鑑別する必要が最初にあります。
ショックは大別して、
①血液分布異常性ショック
②循環血液量減少性ショック
③心外拘束性・閉塞性ショック
④心原性ショック
があります。
そのうち①はアナフィラキシー、神経原性、敗血症性が
含まれます。
それだけでなく薬剤は
心原性や神経原性に血圧低下を来すものがありますので、
要注意です。
今回は、
SHOCK&FIX-Cを意識して、ショックをまず分類するところを
強調して学んでもらいました。
復習になりますが、外傷の場合はJATECで以下のように
講習会で教えています。
S:Skin 皮膚冷汗湿潤
H:HR 心拍数
O:Out Bleeding & Orientation 外出血 意識状態(不穏等含む)
C:CRT 末梢再灌流時間
K:Ketsuatsu 血圧
(これだけローマ字なのは血圧に拘り過ぎるな!、というメッセージだそうです)
F:FAST
I:IV 初期輸液療法
X:X-ray レントゲン
C:Compression 外出血があれば圧迫止血
外傷初期診療コースであります
JATECでSHOCK &FIX-Cという語呂合わせ教えており、
それを桂ERでは内因性でも若干アレンジして使用しております。
その方が覚えやすいのと、外傷と内因性無駄にスイッチを切り替える
必要性が減るからです。
超高齢社会では外傷の人も内因性が原因で受傷することが
あまりに多いので、段々境界は不明確になってきています。
内因性では、
Out Bleedingの外出血が
吐血・喀血・鼻出血・下血・不正出血・血尿が該当します。
FASTも内因性だとショックの原因は全体に及ぶので
RUShによる原因検索になりますし、
レントゲンは骨盤は省略して胸部のみでいいでしょう。
内因性であれば圧迫止血をするわけではないので、
CはCardiography,Cardiogramとして早期の心電図、
心エコー(RUShに含まれる)を評価しましょう、
という感じで教えています。
①血液分布異常性ショックなら末梢が暖かい
Warm shockなので、直ぐに把握できます。
ただし、重症化するとColdになりますので、
cold shockの場合は、血液分布異常性ショックは
除外できないことに要注意です。
②循環血液量減少性ショックは
①と重なる部分もありますが、
出血の存在を肉眼的に確認できるかと
エコーでのIVC・両心系の虚脱、
胸腔腹腔内のEFSの有無、
大動脈解離や巨大動脈瘤の有無で評価します。
③心外拘束性・閉塞性ショックは
頸静脈怒張の存在が大前提で、
緊張性血気胸、心タンポナーデ、肺塞栓等を
頚胸部診察、エコーで評価していきます。
肺塞栓の場合、ショックを来すレベルであれば、
必ず右心系拡張が著明になります。
④心原性はECG、心エコー、肺水腫の存在で
判断します。
そしてどのショックが最も疑わしいか、
自分の中で把握出来たら、
看護師を含むチームに「○○ショックを疑っています」
と伝えて、輸液をガンガン行くべきなのか、
情報共有しましょう。
心原性以外は、一旦輸液を負荷しましょう。
輸液負荷は平均血圧60~65mmHgを超えるか、
乳酸が改善傾向を示すか、
排尿の反応があるか、で総合的に調整していきます。
集中治療であればもっとモニタリング出来ますが、
ERでは上記が限界ですかね。
卒然教育ではなかなかこのような
アセスメントでは教えてくれませんが、
ER現場ではこの考えが必須です。
上記のようにショックの中で
鑑別+蘇生を行って、
じゃぁその中でどういう原因があるか、
という風に考える癖を付けましょう。
ABCDに引っ掛かる病態は当然として、
急性冠症候群、脳卒中、敗血症も
ABCDに引っ掛からなくても時間が勝負になります。
緊急度を見据えた鑑別、蘇生が出来るように
学習会でディスカッション、シミュレーションを
どんどん頑張っていきましょう♪