偶発性低体温症シミュレーション
【投稿日】2020年12月21日(月)
今年の京都の冬は早めの雪が降りました。
積もる程ではないにしても、
これからCOVID-19以外の疾病がどんどん増えていきます。
昨年と同様、全然インフルエンザが流行しないことに
驚きではありますが。
今のレベルでの感染対策でインフルエンザはある程度抑えられる、
ってことなんですかね。
そう考えると、COVID-19の感染性は恐ろしいです…
インフルエンザと比較されて、
インフルエンザの方がもっと死者数が例年多いというものの、
致死率が違いますし、クラスター発生の度合いが違います。
ようやくGoto制限し、これからどうなるか、というところです。
札幌では3週間でピークアウトする効果が出ました。
エビデンスが無い、エビデンスが無い、
だからGoto制限する根拠は無い、みたいなことを
言っている方たちがいます。
今回のような新興感染症に今までのエビデンスを当てはめるのは
浅はかとTは思っています。
これからエビデンスを作るべき事象であるはずです。
何もしないとどんどん悪化する可能性がある状況で、
答えがはっきりしない中、
英断するのがリーダーです。
専門家会議でも尾身先生は
ずっとGotoを含めて不要不急の感染リスクの高い
行動を控えるように強く訴えていたのに、
その意見をあまり判断材料にしてこなかったのは
何でなんでしょうね。
もちろんどの決断をするにも不平不満は出ます。
その中で迅速な決断が望まれるはずなのに、
今回は何とも微妙なタイミングと判断内容…。
かなり悪化して来てからの制限ではどんな意味があるのか…
そういう意味では暫く日本の政治経済医療に
不安・不安定さが付きまとうと思ってしまいます…。
![](/user/news/541/9nb7kd1m4gura887e3c9um8225rjckoo.jpg)
さて、毎月1回金曜日の夕方に研修医シミュレーション学習会をしていますが、
12月度は偶発性低体温症例のシミュレーションを行いました。
偶発性低体温の患者さんは、
日本の場合は、二次性の低体温を考慮する必要があります。
つまり、
脳卒中や感染症等が先行して起きて、
動けなくなったり代謝が落ちて低体温になる可能性が高いので、
必ず低体温そのものの治療だけでなく、
原因検索を並行して行う必要があります。
意識が朦朧として、情報収集がし辛いので、
全身CT、各種培養検査、
甲状腺機能検査等の原因検索、
通常の血液検査、血液ガス、凝固系検査、等々
ある程度検査に頼らざるを得ません。
そして、32℃を一つの指標に治療方針を決めます。
32℃未満の病状が持続する場合は、
不整脈等で急変する可能性があるため、
注意が必要です。
また、偶発性低体温の治療の特徴として、
加療することで病態が急変・悪化する可能性があることも
知っておく必要があります。
知っておくべき現象として、
・Rewarming shock
低体温症により循環血液量が減少しているところに、
体液の加温により末梢血管が拡張し、
血圧が低下する現象… 知ってないと結構焦ります。
・Afterdrop現象
復温過程で中心部体温が低下する現象。
体表に熱が加わると末梢血管が拡張し、
中心循環系に冷たい血液が流入するために生じ、
Vf等の心停止の誘因になる… 恐ろしい!
・Rescue collapse
著明な循環血漿量減少状態、不整脈状態で
移動、CVC挿入、気管挿管等の刺激が
心停止を招いてしまう病態… 恐ろしい!
があります。
Hurry, but gently(急げ!ただ慎重に)の病態です。
また、心停止・Vfに至っても、
32℃未満の場合は除細動・アドレナリン投与は
1回のみ行い、効果が無ければ、
低体温が原因なので、復温が優先されます。
ですので、偶発性低体温のVfは
VA ECMO、いわゆるPCPSの良き適応です。
ちゃんとアップデートすることは意識してますが、
総説でそれなりにしっかりまとまっているのが、
2020年になっても2012年の
New England Journal of Medicineのレビューが
ベストの気がします。
コンパクト、そしてスマートにまとまっています。
治療の特殊性から
毎年偶発性低体温シミュレーションは
行うようにしています。
いくら知識として分かったつもりでも
実際身体を動かさないとイメージも湧きません。
しっかりと身体を動かして学んだことは、
研修期間を終えても身に付いているものです。
今年度も残り3カ月ちょっとになりましたが、
変わらず全力で攻めていきましょう!