桂 ER 救急医療最前線 ブログ

甲状腺クリーゼの鑑別

【投稿日】2017年2月22日(水)

マクドナルドで店員に暴言を吐いたり、

他のお客さんに対応している店員の手をはたいたりした

人の写真を店舗前に公開するようなことをして、

ニュースになりました。

一応自己救済の禁止ということが

民事法で定められています。

そうしないとお互いの暴力に歯止めが効かなくなるからでしょう。

当然、店員がトラウマにならぬよう、

上司が対応したことなのでしょうが、

傷害の切迫が無ければ、上司は冷静に上層部に報告しつつ、

警察にその記録したデータを見せて対応してもらわざるを得ないのでしょうね。

とにかく店員さんが怖い思いをして、

トラウマになっていないことを願います。

ERという現場も常にひとごとではありません。

特に小倉にいた時は、ER現場責任者として、

色々と対応しないといけない場面が多々ありました。

 

2月9日は連発する重症患者の救急対応に追われながら、

夕方に多職種向けの重症病態学習会を行いました。

今回のテーマは、

糖尿病緊急症、甲状腺クリーゼです。

比較的良く出会う代謝内分泌救急です。

 

まずは高血糖緊急症について説明。

糖尿病ケトアシドーシス(DKA)と高血糖高浸透圧症候群(HHS)がありますが、

最初の1,2時間のうちに救急初期対応ではやることがほぼ一緒です。

どんなに高血糖でも、インスリン治療よりも先に

脱水補正です。

500~1000mlの生食を投与した上で、

インスリン治療を始めます。

DKAとHHSの鑑別で重要な

ケトン体測定は尿ではなく血清でしましょう。

尿ケトン体はアセト酢酸を中心に測定し、

DKAで上昇する3-ヒドロキシ酪酸は測定できません。

疑ったら血清でのケトン体測定を忘れないようにしましょう。

3000μmol/L以上になったらDKAを疑います。

1000くらいならHHSでも上がります。

インスリンの効果が相対的に不足している時に

電解質で重要なのがカリウムです。

高カリウム血症の治療でGI(グルコースインスリン)療法というのが

あるように、インスリンはカリウムを細胞内に取り込む作用があります。

ということはインスリン作用不足になると細胞に取り込まれない

カリウムが血中に存在しているので、

必然的に高カリウム血症のリスクがあります。

ですので、高血糖と判明したら、

その段階で輸液を生食に切り替えて脱水補正する必要があるんですね。

逆にインスリンの作用が効きだしたら、

低カリウム血症に気を付けましょう。

 

次いで、低血糖症。

糖尿病で最も多い救急病態合併症です。

糖尿病の既往がある人は、

何かしらの原因で低血糖ということで、

直ぐにブドウ糖単独で投与してもらっていいのですが、

糖尿病の既往が無いあるいは不明の場合は、

必ずビタミンB群も補充しましょう。

何故なら慢性低栄養、アル中等は

ビタミンB群が枯渇して、

ブドウ糖だけを投与すると、

解糖系とTCA回路でエネルギー変換することが出来ず、

嫌気性代謝を助長して乳酸アシドーシスが

進行してしまうからです。

かつ低リン血症も重なると、エネルギー源のATPも

産生されず、いわゆるRefeeding syndromeという

重篤な合併症を来す可能性があります。

ビタミンB群の静注薬は安価ですし、

合併症のことを考えれば、

DMの既往が無い場合はしっかり併用投与しましょう。

 

そして甲状腺クリーゼ。

甲状腺クリーゼは単なる敗血症や

単なる心不全に間違われたり、

ヨード系造影剤を使用して急変するので、

アナフィラキシーに間違われたりします。

はっきり言って鑑別に挙げていないと

絶対に辿り着きません。

そんな馬鹿な、と思う人もいるかもしれませんが、

やはり重症の患者が複数いると、

そこまで考えが至らないことは

決して不思議ではありません。

甲状腺クリーゼの診断基準(第2版)は、

日本甲状腺学会ホームページで公表されています。

まずはどのような時に鑑別して、

診断基準に当てはめるか確認しましょう。

甲状腺クリーゼの高血圧、頻脈は

Ca blockerでは全く効きません。

β blockerでないと効きませんが、

最近はICUで流行っているランジオロールが

レートコントロールに使いやすいです。

 

今回話した全ての疾患は何かしらの基礎疾患に

トリガーがあって急変する病態です。

ですので、いつも言っている

Acute on Chronicという考えを忘れず、

蘇生&補正を行いながら

トリガーの検索をすることを忘れないようにしましょう。

具体的には感染は絶対に気を付ける必要はありますし、

薬剤、膵炎、その他外傷・熱傷等の炎症を来す病態等々です。

 

最後はDKAのシミュレーションを行い、

今年度の重症病態学習会を終えました。

 

来年度も研修医・多職種の皆さんに

役立つ重症病態学習会を行いたいと思いますので、

是非皆さんまた参加をどうぞ宜しくお願いします♪

 

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